ヨウジ ヤマモト~時空を超える黒~
2020/01/4

 

 

 

 

 

 

 

新年明けましておめでとう御座います。

 

 

 

2016年2月にオープンしたDear Joze.は来月、4周年を迎え、5年目に入ります。

 

 

 

 

「Ka na taとYohji Yamamotoのみが並ぶお店」

 

 

 

としてお店を開き、今も変わらず、2ブランドのみのお店として営なめていることを日々有難く感じております。

 

 

 

 

 

Dear Joze.をご利用頂いているお客様、

 

Ka na ta、Yohji Yamamoto両ブランドのデザイナー/スタッフの皆様、

 

共にDear Joze.の成長のため協力してくれている関係者の皆様、

 

 

皆々様のおかげと心より感謝いたします。

 

 

 

本年も変わらず、2ブランドのみで営んで参ります。

 

 

2020年も変わらず、Dear Joze.を宜しくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

新しい試みとして、期間限定でKa na ta、Yohji Yamamoto以外のブランドを販売する、といったイベントをまだぼんやりではありますが考えております。

 

 

 

2020年に何かご縁がありましたら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからはタイトルにもある通り、

 

 

「ヨウジ ヤマモト~時空を超える黒~」

(現在でも有料ではありますが、NEK オンデマンドでご覧頂けるようです)

 

 

 

について個人的な感想のようなものを綴ります。

 

 

「ヨウジ ヤマモト~時空を超える黒~」とは昨年2019年にNHKで放送されたドキュメンタリー番組。

 

 

Yohji Yamamoto デザイナー山本耀司氏に完全密着しています。

 

 

 

そもそも、Dear Joze.代表を務める私がYohji Yamamotoに心酔している理由はデザイナー山本耀司氏本人にあります。

 

 

それゆえに、私は氏の今回のようなドキュメンタリーはもちろん、著書、音楽、インタビューまで可能な限り拝見しております。

 

 

 

長編のドキュメンタリーは私の知る限り、数本しか世に出ていません。

 

 

 

20年以上前の情熱大陸や、30年以上前の映画「都市とモードのビデオノート」がそうです。

 

 

一ファンとして、今回のドキュメンタリーは非常に貴重なものでした。

 

 

映像を見て、尊敬や感動といった感情はもちろんありましたが、それよりも単純に嬉しかったです。

 

 

 

このブログをご覧頂いている方でもし未だ見ていない方は是非、正月の終わりにゆったりと。

 

 

 

 

 

 

 

次に、番組の私の好きなシーンや言葉について触れます。

 

 

 

ネタバレを気にされる方は一旦ここまでで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「命かけてる?」

 

 

 

 

番組内では一度のみではありますが、氏のインタビューや著書ではよく見るワードです。

 

パタンナーが仕上げたサンプルに対して施された1アイデアについての言葉のようでした。

 

そのアイデアを見て、

 

 

「ちょっとやってみようかな、と思った程度じゃない?」

 

 

笑って濁す社員に対しての、

 

 

「命かけてる?」

 

 

本当に命をかけて服作りをしてきた人が放つ言葉。

 

 

この言葉をかけてもらいながら、服作りの経験を積んだYohji Yamamoto社員が独立して、デザイナーとしてデビューした時には間違いなく素敵なブランドが生まれるんだろうな、なんて感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「半歩踏み出すのがアバンギャルド、二歩踏み出すとそれはただのアホなんです。時代とずれちゃう」

 

 

 

現代のアバンギャルドと言う単語が持つ意味について言及しているような言葉でした。

 

アバンギャルドとは、革新的,前衛的な芸術やそれを生み出す芸術家を指します。

 

 

私自身、この革新・前衛のラインを誤っている人が多いように感じています。

 

 

そのラインを私は、現状では見たことがないけれど、後にベーシックになるものであるかどうか、と考えるようになりました。

 

ただ単に変なこと、見たことないことをやればいいんじゃない。

 

 

 

 

「黒で見事に上手にカットされた服ってのは、人間の体を美しく見せると僕は発見した」

 

と山本耀司氏は語っています。

 

 

 

Yohji Yamamotoがパリコレクションデビューを果たす前、マイナスな意味を多く含む「黒」は華やかなパリコレクションにおいてタブーとされてきました。

 

 

 

そこで、「黒がタブーなら、黒で作ろう」ではなく、

 

 

「人間の体を美しく見せるために、黒で作ろう」だったんですね。

 

 

 

簡易な情報のみだと、

 

「黒がタブーとされていた時代に黒でパリコレクションを行った」

 

となってしまいますが、裏付けがしっかりあったということ。

 

 

その裏付けが間違っておらず認められて、今ではベーシックとなっていること。

 

 

それが「半歩先」のアバンギャルドではないかと考えています。

 

 

 

私も、Dear Joze.をKa na taとYohji Yamamotoのみのお店にすると決めてから、多くの人から「不可能」と言われてきました。

 

 

セレクトショップという構造の上で営む以上、2ブランドはありえない

 

 

という意味だと捉えています。

 

 

確かに、世の中には2ブランドのみのセレクトショップはおそらく存在しません。

 

 

普通に考えれば、不可能なんです。

 

 

 

一般的なセレクトショップは、10ブランド以上のコレクションからバイヤーがセレクトをして一つの店舗に集めて販売する形がほとんどです。

 

 

時にはブランドを増やし、減らし、その時々のバイヤーの感覚に沿ったブランド/コンセプトの衣服が並ぶ。

 

 

そのバイヤーの感覚を好む方が、一気に豊富なブランドを見れるということに価値があります。

 

 

 

 

Dear Joze.のセレクトにはほとんど私の感覚は反映させておりませんし、2ブランドしか見ることができません。

 

 

一般的なセレクトショップの提供する価値はDear Joze.には存在しないわけです。

 

 

それでは、従来までのセレクトショップの構造が完璧なのか、というとそうではありません。

 

 

しっかりとしたデータはありませんが、お店をオープンして、5年で90%、10年で95%程がお店を営むことができなくなってしまい畳んでいるようです。

 

 

 

従来通りのセレクトショップをしていてはもう無理なんだな、と思うのに十分な確率でした。

 

 

 

そのデータを見たときに、

 

そういえば、私が10年前に知っていたセレクトショップやブランドはどうなっているのだろうと調べてみました。

 

 

案の定、ほとんどがなくなってしまっていたり、全盛期のような勢いは廃れてしまっていたのです。

 

 

 

ほとんどのブランドが10年で廃れてしまうのであれば、当然のようにそのブランドを取り扱うセレクトショップも共に廃れていきます。

 

 

その逆もしかりです。

 

 

前々から知ってはいましたが、「アパレル業界」には「終わり」が来るのが当たり前なんだな、と再確認しました。

 

 

 

それであれば、「終わり」のないブランドのみを取り扱うセレクトショップを営もう。

 

 

 

ファッション業界の中で当たり前になっている「終わり」の無い、

 

永遠に続くと、私が信じてやまないブランドのみが並ぶお店を。

 

 

 

奇をてらって「2ブランドのみ」を謳っているわけではありません。

 

 

 

いつか、私の2ブランドのみのセレクトショップの考え方に近い人が、その人にとっての「終わり」のないブランドで少量ブランドのみのセレクトショップを営む時が来て、

 

Dear Joze.が「現状では見たことがないけれど、後にベーシックになるもの」となれたら嬉しいです。

 

 

他にも、2ブランドのみで営む理由、何故Ka na taとYohji Yamamotoなのか、多くの理由があります。

 

 

一部は過去のブログに綴っておりますので遡ってご覧頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

「くたばる前にそろそろ社会的な、政治的なメッセージを服に入れていきたい。

直接話すとダサいから、喋るんじゃなくて服に入れていきたいと思って」

 

 

 

 

 

近年のYohji Yamamotoのコレクションに見られるメッセージがプリントされたコレクションピースが生まれた理由がわかるお言葉。

 

服をコレクションで見せる、ということに深い意味を感じさせます。

 

 

メッセージがプリントされた衣服を購入して、着用する人にとっても考えさせられるお言葉ではないでしょうか。

 

 

メッセージプリントのデザインが格好いいから、流行ってるから、で購入して、着用することがほとんどかと思います。

 

 

その中で、今回のドキュメンタリーを見て、その衣服にプリントされたメッセージに共感/感動したから、自分がその衣服を着て街を歩くことで、自分が共感/感動した山本耀司氏のメッセージを多くの人に共有できたら、という理由で衣服を纏うことを考える方が増えていくような気がしています。

 

 

どちらが正しい、間違い、といったことはないですが、

 

 

「一着の服を選ぶってことは一つの生活を選ぶってことだぞ」

 

 

と語る氏の衣服を選ぶ理由として、後者は個人的にとても素敵だと思います。

 

 

 

 

 

「少なくともうちだけは、洋服だけは手で作って手から出ていく何か。

人間の手って感動だし、エモーションだし、カルチャー。

人間の手で作るものには何か訴えるものがある。

それを信じています。

信じていなきゃやっていけないから」

 

 

 

 

 

番組内では、「手作業」について多く言及されていました。

 

 

「手引き(パターン)でやってる世界最後の会社だから自信持って。

一段上のやつを追い抜け」

 

 

と若手スタッフに語る山本耀司氏からは強い気持ち、信念を感じる気迫がありました。

 

 

よく、Yohji Yamamotoの衣服にはパワーがある、反骨心を感じる、といったインタビューがあり、今回も実際に着用しているお客様がそのように語るシーンがありました。

 

 

 

山本耀司のデザイン、のみでパワーを生み出しているのではなく、

 

Yohji Yamamotoの衣服に関わる全ての人の手作業によってそのパワーが衣服に宿っている、

 

ということを感じます。

 

 

 

Yohji Yamamotoの衣服を提案する、私のような仕事をしている人間はそのパワーを感じています。

 

だからこそ、自分の生業に出来ています。

 

 

 

 

Yohji Yamamotoの衣服は、一般的な衣服と比較すると非常に高価。

 

今まで、「何故こんなに一着の衣服が高いのか」と思っていた方の不思議も、もしかしたらこの番組を見ることで解決されるかもしれません。

 

 

手作業でパターンを引く、ということからもそうですが、プリントや刺繍のシーンでは実際に捺染している職人、刺繍職人の拘りも感じられます。

 

 

加えて、服を完成させるまでの仮縫いのシーンでは多くのスタッフが関わっていることを目の当たりにします。

 

 

どこかのデザインを模倣して、技術を問わない方法で生産され、試行錯誤されることなく、安直に完成される衣服が安価で、Yohji Yamamotoの衣服が高価。

 

 

価値がある。

 

私はそう信じています。

 

 

 

 

 

 

 

番組のラスト。

 

パリコレクションの発表を終え、インタビュアーに、

 

 

「あなたはデザイナーだけではなくアーティストですね」

 

 

と言われた山本耀司氏は、

 

 

「いいえ、私はただの洋服屋です」

 

 

と答えていました。

 

 

洋服屋と訳されていますが、洋装店を営む母親の元で勤めていた、服を作り始めたあの頃からやっていることは同じです、という意味に聞こえて、ピュアに1ファンとして、感動しました。

 

 

 

 

最後になりますが、今回のドキュメンタリー番組の一番の魅力はやはり、

 

 

Yohji Yamamotoデザイナー山本耀司氏の仕事が見える

 

 

さらに言うと、

 

 

「服を作る」を生業にしている人の本来見ることのできない裏側を見れる

 

ことです。

 

 

これからファッションの業界に進む人、進みたい人にとって間違いなく初見な情報が詰め込まれています。

 

 

 

現代において、このドキュメンタリー番組に出演することでそれを伝えることができるデザイナーはほんの一握り、何なら「山本耀司」にしか出来ないことだったかもしれません。

 

 

ネタバレのようなお話を散々してしまった上ではありますが、是非、一度はご覧くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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